あらすじ
過労死した臨床心理士が転生した先は、前世で唯一の癒やしだった恋愛ゲーム『Bloom Garden』の世界だった。
ただし——主人公でも、攻略対象でもなく。
転生したのは、ゲーム内でたった一行のテキストしか出番がないスクールカウンセラーのモブNPC。名前なし。立ち絵なし。存在価値、一行。
「……いやいや、せめて攻略対象の友人Aとかにしてくれよ」
嘆いていても始まらない。カウンセラーとして赴任した花園ヶ丘学園で、朝霧蓮は気づいてしまう。
ゲームのヒロインたちが、画面の向こうでは描かれなかった深刻な心の傷を抱えていることに。
完璧な笑顔の裏で感情を見失った生徒会長。
誰かに頼ることができない、笑顔のムードメーカー。
「王子様」を演じ続けることに壊れかけた男装の麗人。
言葉を声にできない、沈黙の少女。
大人を信じられない、全身で怒りを纏った問題児。
ゲームでは主人公のイケメンムーブ一つで解決した「悩み」が——現実では、そんな簡単に治るわけがなかった。
前世のカウンセリング技術とゲーム知識を武器に、蓮はヒロインたちの心に寄り添っていく。ゲーム主人公には決して見えなかった「裏側」に手を伸ばして。
しかし——
「先生がいないと、私、壊れちゃいます」
治せば治すほど、ヒロインたちは蓮に依存していく。
「信頼」はいつしか「執着」に変わり、
「感謝」はいつしか「独占欲」に変わり、
カウンセリング室は——五人の少女が一人の男を奪い合う修羅場になっていた。
ゲームの主人公は「攻略」した。
俺は「治療」した。
壊れたのは——彼女たちの心じゃなく、彼女たちの「距離感」だった。
これは、名前すらなかったモブNPCが、恋愛ゲームの裏側でヒロイン全員に攻略される、処方箋ラブコメ。