あらすじ
ブラック企業に勤めるエンジニアの俺が次に目覚めたのは、戦国時代のド真ん中。
しかも、よりによって後に天下人となる「日吉丸」の幼少期だった。
だが、現実は黄金の城なんて程遠い。
病で父を亡くし、家計は火の車。
何より、目に入るもの全てが泥と垢にまみれ、妹のアサは肌荒れに泣いている。
「……こんなの、放っておけるか」
俺は前世の知識を総動員し、まずは身近なものを「作り変える」ことにした。
竈の灰と獣の脂を煮込み、この時代には存在しない魔法の石――「石鹸」を生み出す。
「お兄ちゃん、これすごい! 汚れが消えちゃう!」
汚れを落とせば病が消え、病が消えれば笑顔が増える。
最初は家族、次は村の寺、そして近隣の武士へ……。
一塊の石鹸が起こした波紋は、やがて尾張中に広まり、俺の元には驚くほどの富と「知恵者」としての噂が集まり始める。
これは、一人の男が「当たり前の便利さ」を武器に、戦国時代の常識を塗り替えていく物語。
やがて織田信長という男に出会ったとき、日吉丸が差し出したのは、温めた草履ではなく、誰も見たことがない「一足の靴」だった。