あらすじ
戦地にいる兄から届く手紙は、いつも教室で笑われていた。
靴の履き間違い。
鍋に謝った話。
星を数えようとして途中でやめた話。
愉快で、少し間抜けで、
戦争の匂いを感じさせない手紙ばかり。
しかしある日、兄の戦死が知らされる。
妹は「嘘ばっかりだった」と怒り、手紙を封印する。
やがて大人になり、母となった妹は、
偶然その手紙を読み返すことになる。
そこにあったのは、
現実から目を逸らすための嘘ではなく、
生活を壊さないために引かれた“限界線”だった。
恐怖を、そのまま渡さないために。
眠れる夜を守るために。
戦場を感じさせない兄の言葉が、
少しずつ本当の意味を持ち始める――。
静かな嘘が、誰かの生活を支えていく物語。