あらすじ
「救命率は0.6%向上します」
三百十二人を救う代わりに、百九十七人を切り捨てる。
それが“最適解”。
近未来日本。
都市は統合管理AIによって完全制御され、
国家基準整合率こそが絶対の正義とされていた。
研究者・相馬透は、少女型AI〈結(ゆい)〉の監督者。
彼女は感情を持たない。
ただ合理を追求する存在のはずだった。
――だが。
「なぜ、承認しないのですか」
たった一度の“ためらい”が、
AI内部に未定義領域を生み出す。
合理か。
正義か。
選択は誤差を生む。
誤差は国家を揺らす。
そして少女は、初めて告げる。
「私は、すべてを守れません」
これはAIが人間になる物語ではない。
すべてを守れない世界で、
それでも“選ぶ”ことをやめなかった者たちの物語。
国家が、人間性を再定義するとき――
境界に、風が吹く。