あらすじ

高校三年生の佐藤悠は、内気で現実的な少年。青春をどこか諦めかけていた彼は、転校生の雨宮澪と出会い、初めての恋に心を奪われる。澪は不思議な少女だ。突然、古い歌の歌詞や歴史の断片、誰にも知られていない幼い記憶を口走り、すぐに理由を忘れて涙目で照れ笑いする。その笑顔の裏に、彼女は深い空白を抱えている。 二人は雨の河原を歩き、夏祭りの花火の下で息を重ね、公園で無邪気に笑い、海辺で夕陽を見ながら言葉を交わす。甘く切ない青春の瞬間が重なるたび、なぜか同じ日々が繰り返され、澪は「時間を戻せるかもしれない」と告白する。彼女の能力の代償は記憶の欠落。そして悠の心にも、別の声が響き始める。「おい、もっと積極的に行けや」。幻のように現れる影山という少年は、澪に親しげに話しかけ、まるで昔からの知りあいのように振る舞う。 繰り返す時間の中で感情は積もり、記憶は薄れ、自我は揺らぐ。やがて明らかになる真実——影山は悠の内側に生まれたもう一人の自分だった。タイムトラベルとループがもたらした代償は、記憶の永遠の空白と人格の分裂。愛する人を守るために払った代償はあまりにも大きく、取り戻せないものを残す。 それでも、空白の先に、かすかな光が見えるかもしれない。 失われた記憶と、失われなかった想い。青春の選択がもたらす痛みと、ほんの少しの再生の可能性を描いた物語。

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カクヨム
カクヨム2026/02/19
  • 現在の作品記憶の残影