あらすじ
「あっちの黒石さんが、ちょっと寂しそうなんです」
超合理的で理論派の囲碁部部長・結城める。
彼女にとって囲碁とは、AIの解析に基づき「最善手」を導き出すパズルだった。感情を排し、勝利への最短ルートを突き進む彼女の前に、ある日不思議な転入生が現れる。
佐倉陽向。彼女は祖父から譲り受けた蛤(はまぐり)碁石を愛用し、「石たちの声」を聞くという。
理論的にはあり得ない場所へ、楽しそうに石を置く陽向。そしてクッションを抱えたまま寝言で核心を突く後輩、寝占くるみ。
計算不能な二人のペースに、めるの完璧な包囲網は少しずつ崩されていく。
冷たいはずの石に宿る温度。指先から伝わる鼓動。
窓から差し込む夕陽の中、少女たちの指先が盤上で重なるとき、物語が静かに動き出す。
これは、孤高の部長が、不思議な仲間と共に囲碁を「美しい」と思えるようになるまでの、瑞々しい青春の物語。