あらすじ
王国教会から届いた一通の命令書。
“聖女の器”の兆候が出た娘リリは、明朝、神殿へ連れていかれる。
転生者の母マリアには分かっていた。
それは「保護」ではなく、母子を引き離すための正しい形をした奪取だ。
だから母は決める。
守るために逃げる。逃げるのは負けじゃない。
夜の道、追ってくる神殿騎士。迫る魔力嵐。
逃げた先で辿り着いた古い祠は、なぜか母娘の手がつながれた瞬間に金色に光り、嵐を弱めた。
村人の声が広がり、逃亡者だったはずの母は、なぜか英雄扱いされてしまう。
嵐を鎮めたのは、祈りでも儀式でもなく、安心だった。
母が英雄を名乗らずに守り抜いたのは、称号より先にある小さな体温。
これは、娘を守るために逃げたら、世界のほうが勝手に“英雄”を作ってしまった話。
そして、母がそれを静かに書き換える話。