あらすじ
辺境ステーションの整備士ヴァレンティン・コルスは、退屈な日常作業の中で、存在するはずのないボタンを押した。
「今日も何も起きない」と思いながら。
その三文字――YAS――が何を意味するのか、彼はまだ知らなかった。
押した瞬間から、時間が歪み始める。空間が侵食され始める。観測不能だった構造物が宇宙に出現する。乗員たちは分裂し、一人は狂気に触れ、ステーションは静かに壊れていく。
だがヴァレンティンを最も苦しめるのは、物理法則の崩壊ではない。
自分が「軽い人間だった」という、取り消せない事実だ。
重大な失敗をしたわけではない。悪意があったわけでもない。ただ、何も考えない瞬間に、宇宙に触れてしまった。それだけのことが、全てを変えた。
赦しは来ない。正しい答えも来ない。宇宙はただ――応答する。
罪悪感の物語ではなく、自己像の崩壊の物語。SFの外装をまとった、人間の「軽さ」についての7話。