あらすじ
常世《とこよ》と現世《うつしよ》の狭間に広がる、幻妖の森。
妖怪、精霊、異形のもの――人ならざる存在が息づくその森を、天帝の第一皇女・李辺留姫《りべるひめ》が治めている。
(第一章)酒は百薬の長か、万病のもとか。
ひとつの諺《ことわざ》をきっかけに、精霊たちは人の世へ降り立ち、傷ついた心のゆくえを見届ける。
(第二章)祠に宿る若葉の妖精が、泣き腫らした少女の願いを抱えてくる。
生みの親に逢いたい――その望みは、救いにも刃にもなり得る。
李辺留姫は、真魔天鏡《しんまてんきょう》にて真実を映し、
“選ぶ”という人の営みを損なわぬまま、そっと導く。
これは、裁きの物語であると同時に、観察の物語。
神々の森より、人の迷いと祈りを静かに見つめる連作幻想譚――『幻妖の森 観察録』。
*主に登場する精霊たち
■ 李辺留姫(りべるひめ)
幻妖の森を治める精霊界第一皇女。
常世と現世の狭間に玉座を構え、退屈を何より嫌う。
人間の営みに強い興味を抱き、眷属たちを人の世へ遣わす張本人。
気まぐれで奔放だが、その眼差しは鋭く、人の本質を見抜いている。
■ 燈緋(とうひ)
李辺留姫に仕える龍狐の精霊。
理知的で穏やか、物事の本質を静かに見極める策士。
人の弱さや迷いに寄り添い、導くことを厭わない。
人間界では冷静な大人の男性へと姿を変える。
■ 蘆刈(あしかり)
銀狐の精霊で、燈緋と対をなす存在。
人の感情や欲を巧みに操り、時に残酷な選択を迫る。
皮肉屋で挑発的だが、人の業と弱さを誰よりも理解している。
人間界では艶やかな女性の姿を取ることが多い。
■ 風隠(かざかくし)
風を司る精霊。
燈緋と蘆刈の暴走を止めるため、しばしば審判役を務める。
常識的で苦労性だが、情に厚く、人間の営みを公平に見守る。
人間界では目立たぬ中年男性の姿をしている。