あらすじ
その鑑定所は、判決を下さない。
獣人と人が共に暮らす街の一角。
持ち込まれるのは、美術品、骨董、宝石、
そして時には、行き場をなくした願いや後悔。
けれど鑑定士たちが示すのは、
正しさでも、救いでもない。
ただ、動かない“事実”だけだ。
選ぶのは、あなた自身だと告げるために。
鑑定所事務所に立つのは、
オッドアイの猫の副所長・アキ。
気まぐれで無愛想。
しかしその鑑定は、誰よりも静かに深い。
彼の隣には、嘘を見抜くワタリガラスの鑑定士。
半歩後ろから必死に食らいつくのは、
人間の見習い鑑定士、東峰。
そして奥には、すべてを見守るフクロウの所長がいる。
依頼人は答えを求めてここを訪れる。
背中を押してほしいと願い、
ときに、代わりに決めてほしいとすら望む。
それでもこの場所は、奪わない。
迷いも、痛みも、選ぶ権利も。
その人のものとして、そこに置く。
支える者と、支えられる者。
受け渡されていく技術と信頼。
積み重なる時間の中で、
見習いは背中を追い、
鑑定士たちは今日も隣に立ち続ける。
これは――
誰かの代わりに決めないために在り続ける、
鑑定士たちの物語。
―――― さあ、鑑定の時間です。