あらすじ
月見坂市を見下ろす、如月コンツェルン本社ビル。
最新鋭の清掃ドローンが管理するその地上48階、社員専用ラウンジの窓ガラスの『外側』に、ありえない不純物が付着していた。
それは、泥にまみれた片足だけの靴跡。
物理的に人間が立つことなど不可能な天空の密室に、誰が、どうやって、何のために足跡を残したのか。
母・菫に呼び出されて本社を訪れた鑑定士・如月瑠璃は、その物理的なトリックを冷徹に見抜きながらも、そこに込められた『目的の欠落』に、かつてない生理的な嫌悪感を覚える。
やがて判明する、靴底の泥の成分。それは遠く離れた北の地、星見上市(ほしみかみし)にある重犯罪者刑務所の土壌だった。
浮かび上がるのは、如月家が20年前に歴史から抹消したはずの『禁忌の名前』。
かつて瑠璃の姉・翡翠を誘拐し、コンツェルン乗っ取りを企てた義理の叔父とその母の存在。
19年の沈黙を破り、彼らは戻ってきたのだ。
地上48階の足跡は、如月の死角を熟知する亡霊たちからの、『我々はいつでもお前たちを狩れる』という無言の宣戦布告だった。
厳戒態勢が敷かれる中、あざ笑うかのように実行される襲撃。
鉄壁の護衛すら無力化する周到な罠。
そして、これまで『裁定者』であった瑠璃とサクタロウ自身が、極寒の北の大地へと連れ去られる——。
凍てつく監獄で再会する、20年の怨念。
過去の因縁と現在の悪意が交錯する時、鑑定士と助手の、命を賭けた生存戦略が幕を開ける。