あらすじ
亡くなった義母の遺品整理をしていた秀人は、物置部屋で大量の子供服と一冊の日記を発見する。服は何箱にもわたって丁寧に保管されており、日記には娘である奈緒への愛情と苦悩が綴られていた。
生き物好きの美咲は、田んぼでオタマジャクシを3匹捕まえて帰ってくる。母親の奈緒は生物学の知識を活かして娘と飼育の準備を整え、温かく見守る日々が始まる。美咲は学校でも理科室のメダカ世話を買って出るほど生き物に熱中しており、その姿を奈緒は眩しく見つめる。
美咲はここ最近、繰り返し同じ夢を見るようになる。夕日に染まる見知らぬ教室で、影になって顔の見えない少女がオタマジャクシをじっと眺めている夢だ。夢の中の少女は次第に笑顔を失い、ついにはオタマジャクシの脚を根元から引き抜きながら「ずっと、このままでいてね」と囁く。
田舎育ちの奈緒は、小学三年生のとき学校でオタマジャクシの飼育係を担う。「いつまでも、このままの可愛い子でいてちょーだいね」という母の言葉を胸に宿した奈緒は、変態を始めるオタマジャクシに恐怖と嫌悪を覚え、成長を止めようとエサを意図的に減らし始める。やがてオタマジャクシたちは共食いの末に全滅し、奈緒はその罪を誰にも告白できないまま、オタマジャクシの脚を引き抜く悪夢を大人になっても見続ける。
美咲が飼い始めたオタマジャクシは、二ヶ月経ってもカエルに変態する気配がない。ある夜奈緒が生き物部屋をのぞくと、成長抑制剤を手にした美咲が居た。
「かわいいままでいてほしいから」と罪悪感のかけらもなく言う美咲に、奈緒は言葉を失い、ただ抱きしめることしかできない。
時は経ち1年後、秀人は美咲の成長が止まっている異常事態に動揺し、病院へ行こうと強く訴える。しかし、奈緒はそれを聞き流し、変わらぬ姿の美咲を「かわいい」と抱きしめる。金魚鉢の中では3匹のオタマジャクシが、季節が巡ってもそのままの姿で、ただ揺蕩い続けていた。