あらすじ

​ 言葉は、いつだって鋭利な刃物だった。  かつて冷徹な批評によって一人の若き作家を絶望に追い込み、その筆を折らせた過去を持つ「私」は、自責の念から自らの筆を捨て、他人の文章を整えるだけの校正者として静かに暮らしていた。 ​ ある深夜、一通の正体不明の原稿を校正していた私は、液晶画面に映る文字に「異変」を見つける。標準的な明朝体のはずのその文字には、本来あるはずのない、針のように鋭利な**「角(つの)」**が生えていたのだ。  単なるフォントのバグかと思われたそれは、次第に物理的な実体を持ち始め、私の指先を切り裂き、さらには部屋の四隅までもが牙を剥くように鋭く変貌していく。 ​ 恐怖の中で、私はかつて自分が葬り去った言葉たちの怨念を思い出す。この「角」の正体は、表現の場を奪われ、行き場を失った言葉たちが先祖返りを起こした「鬼」の骨だったのだ。  文字という名の「檻」が壊れ、過去の罪が肉体を侵食し始める。逃げ場を失った私は、自分自身を「器」として差し出すことで、暴走する言葉たちを繋ぎ止めようとするが――。 ​ 言葉で人を殺した男が、言葉によって「鬼」へと作り替えられていく、因果応報の怪異譚。

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エブリスタ
エブリスタ2026/02/17
  • 現在の作品『この文字には、角がある』