あらすじ
芸能事務所で裏方として働いていた景司は、過酷な労働と終わりの見えない緊張の中で心をすり減らし、うつを発症して職場を離れる。逃げ腰である自分を責めながらも、休職はやがて退職となり、彼は芸能界という速度の速い世界から完全に距離を取る。再就職先で景司は、前に出ない慎重さが人を支え、衝突を和らげる力になることを少しずつ知る。逃げた人生は失敗ではなく、壊れずに生き延びるための選択だったのだと理解したとき、景司はようやく過去を否定せずに受け止める。大きな成功も劇的な救済もないが、一歩引いた位置から歩き続ける静かな肯定が、彼の人生を支えていく。