あらすじ

民俗学を専攻する大学四年生・片桐悠真は、就職活動と卒論に追われる夏の夜、ゼミの掲示板に匿名で投稿された一本の動画を目にする。 『【閲覧注意】一九七八年G県猟奇事件の現場映像 本物』 そこに映し出されていたのは、山奥の廃村に残る旧家「半鳴家」――その屋内に据えられた、底の見えない巨大な井戸だった。ノイズの奥に一瞬だけ映り込む白い鬼面。闇の中に佇む黒い人影。そして、撮影者に向けられた声。 「来たか。待っていたぞ」 動画を見た夜、悠真は夢の中で井戸の底に立っていた。泥に足を取られ、どこからともなく聞こえる数え声。闇から現れた影は告げる。 「お前は三十三番目だ」 幼い頃、祖母に固く禁じられた山。その向こう側にあるという、人が近づいてはならない場所。祖父と共に峠を越え、二度と帰らなかった者。認知症の祖母はもう何も語れない。 コメント欄に残された不可解な言葉たち――「すみこ」「三十三番目は、私?」「八月十日、峠で待つ」。時刻表示のない投稿。視聴中に書き込まれたメッセージ。 知ってはならないものを、知ってしまった。 見てはならないものを、見てしまった。 そして、数えられてしまった。 一九七八年にG県の山間で何が起きたのか。半鳴家とは何者か。井戸の底には、何がいるのか。民俗学徒の好奇心と、祖母との約束の間で引き裂かれながら、悠真は禁域の山へと足を踏み入れていく。 これは、数えられた者たちの物語である。 【登場人物】 片桐悠真――S県立大学四年生。民俗学専攻。祖母から聞いた山の伝承に惹かれ続けてきた青年。就職活動の壁に直面しながらも、一本の動画をきっかけに、封印された過去へと向かう。 佐藤里奈――悠真と同じゼミに所属する女子学生。深夜、ゼミ掲示板で動画を発見し、悠真に共有した人物。真面目な性格ながら、動画を見た後「井戸のことばかり考えてしまう」と語る。 悠真の祖母――幼い悠真に「あの山には行っちゃなんねえ」と言い聞かせた人物。祖父が峠で何を見たのか、最後まで語らなかった。現在は認知症を患い、施設で暮らしている。 K_MIN――動画投稿者の不明なアカウント。プロフィールは空欄、アイコンは黒一色。その正体は一切不明。

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カクヨム
カクヨム2026/02/17
  • 現在の作品ナマナリサマ ―喰われた記憶の村―