あらすじ

大学のゼミで出会った彼は、静かで、言葉が少なく、どこか現実から半歩だけずれている男だった。恋愛の言葉を使わない。 愛しているとも、付き合おうとも言わず、感情はいつも、比喩の中にだけ置かれる。 友人の「元恋人」だったという事実は、彼女の胸に小さな棘を残す。 それでも、視線は自然に彼を追ってしまう。 彼は、彼女の手を見る。利き手を見抜き、過去を言い当て、そして「シロクマの王国」という、どこにも存在しない場所の話を始める。 そこでは、誰も矯正されず、誰にも期待されない。ただ愛だけがある白い世界だという。 それが寓話なのか、誘惑なのか、逃避なのか、彼女にはまだ分からない。けれど彼の言葉に触れるたび、彼女は長いあいだ隠してきたもの――手と、本当の欲望を、静かに思い出していく。 彼は言う。 「左利きしかいない国があるんだ」 白い雪と白い獣だけの、誰にも踏み荒らされない王国。 冗談のようで、寓話のようで、 それでも彼の語る世界は、なぜか胸の奥に引っかかる。

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小説を読もう2026/02/17
  • 現在の作品シロクマの王国