あらすじ
平安の都で書吏として勤めていた景司は、同僚の讒言と裏切りにより役所を追われる。誇りも居場所も失い、心を病んだ彼は、遠縁の神官のもとで古い書物に触れ、「やまとうらやす」「しわかみほつま」という言葉に出会う。それは、失われた理想の国を示すものだった。景司はその国を求めて旅に出る。山村で出会った老人、名もなき民の暮らし、そして再びの裏切り。孤独と絶望の中で、それでも彼は歩みを止めなかった。やがて都へ戻った景司は、旅のすべてを書として記す。彼は悟る。求めていた国とは遠い理想郷ではなく、苦しみの中でも歩き続けた自らの心の在り方そのものだったのだと。すべてを失った男が最後に得たのは、静かに生きる確かな意味だった。