あらすじ
都立常盤高校に入学した朝倉亜由美は、親友・水野美沙の「平気」「大丈夫だから」が、最近『盾』みたいに聞こえることに気づいていた。笑っているのに笑い方が硬い。踏み込んだら壊れそうで、亜由美は隣にいるしかできない。
そんな中、教室で交わされた言葉が録られ、切り取られ、SNSで拡散される。前後を失った声は刃になり、噂は「証拠」の顔をして増殖する。先生が黒板に向いた瞬間だけ膨らむ囁き、目が合う前に逸れる視線、善意のふりをした質問――『普通の教室』が、当事者を静かに追い詰めていく。
亜由美は美沙を守ろうとして言葉を選び、美沙は息を保つために沈黙を選ぶ。けれど守るつもりの選択ほど、ふたりの距離を狂わせる。さらに過去の当事者・篠崎夕紀も、拡散を偶然見つけて動き出す。彼女はかつて学校の空気に傷つき、関係がほどけたままの『未完の友達』だった。
言葉は形がない。だからこそ、切り取られやすい。けれど形がないからこそ、結び直すこともできる。特別な才能も派手な武器もない『モブな僕ら』が、学校という小さな世界で、嘘に頼らず、逃げずに「友達でいる」を選び直していく。透明で見えないはずの約束を、もう一度、光の当たる場所へ。