あらすじ
趣味がない。好きなものがない。でも、何かを作っている人を見ると、どうしても目で追ってしまう。
大学三年の俺・瀬川凪は、なんとなく始めた古本屋のバイトで、先輩パートの朝倉灯と出会った。
親しみやすくて、よく笑う。でも、どこか遠くを見ている目をしている。
やがて俺は知ってしまう。彼女がかつて小説を書いていたことを。新人賞に何度も挑んで、それでも届かなくて、ある日静かに筆を折ったことを。
何もしていない俺と、やめてしまった彼女。
陽だまりの棚の中で、ふたりの空白がゆっくりと交差していく。
——これは、何者でもない僕たちの、ある一年の話。