あらすじ

五年間、結婚記念日の食卓に夫が来たことはない。 伯爵夫人ノエルの結婚は、最初から名ばかりだった。 夫は社交の場でだけ妻の腕を取る。 領地の成果はすべて、愛人の助言として語られた。 帳簿を整えたのはノエルだった。 防疫体制を一人で築いたのも。 それでも彼女の名が報告書に載ることはなかった。 五年目の記念日、ノエルは食卓に一通の書類を置いた。 婚姻無効の申請書。 微笑んだまま告げた一言を残し、彼女は屋敷を出た。 持ち出したのは、木箱ひとつ。 五年分の帳簿の控えだけ。 残された引き継ぎ書を、読める者はいない。 招かれた王都の救療院で、ノエルは寡黙な軍医と再会する。 二年前、領地で一度だけ言葉を交わした男。 彼はなぜか、ノエルの処方を密かに書き写していた。 帳簿を失った領地で、何が起きるのか。 あの軍医が処方を覚えていた理由を、ノエルはまだ知らない。

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小説を読もう2026/03/11
  • 現在の作品白い結婚の終わり