あらすじ
「ねぇ見て見て|祐樹《ゆうき》!これっ、きょうりゅうのキバだよ!」
荒れ果てた石畳の上に寝っ転がって、楽しそうに先の尖った石ころを高々と太陽へ掲げる少女。
そんな彼女に、少し大人ぶってわざとらしくため息を吐いて見せる。
「そんな訳ないじゃん。ただの石でしょ。汚いから早く捨てなよ|叶多《かなた》」
こんな場所に落ちている土塗れの石ころが、恐竜の化石なんてモノな訳がない。
その返答に叶多はムッと頬を膨らませると、
「分かってないなぁ祐樹は。あの大きな雲のふもとには森があって、|て《・》|ぃ《・》|ら《・》|の《・》|さ《・》|う《・》|る《・》|す《・》が雲にむけて大きな鳴き声を上げてるんだ」
そう言って遠くの入道雲を見据え、その瞳を夢を包み込んだガラス玉のように輝かせた。
「きょうりゅうなんてずっと昔にぜつめつしてるんだぞ。そもそも本当にいたかどうかも…」
「いるよ」
一切の曇りのない確信を持った返答を受けて思わず言葉に詰まる。
「だって、その方がワクワクするでしょ!いつか祐樹にも見せてあげる。約束ね」
そして彼女は吹き抜けた風に髪を靡かせながら、暖かな木漏れ日のように笑ってみせた。