あらすじ

​「会いたいなんて、叫んだって届かない。だから、俺はハンドルを握るんだ」 ​2月。マイナス20度の根室・花咲港。 吐き出す息すら凍る夜明け前、25歳の俺は40トンの相棒に鮮魚を積み込む。 行き先は、春の気配が揺れる街、大阪。 ​シルバーフェリーの船底で、エンジンの鼓動を子守唄に一人眠る。 豊洲で100ケースの荷を下ろし、朝日を背に受けて東名を西へ。 法規に守られた「430休憩」の静寂だけが、俺が「男の城(キャビン)」で、吹田サービスエリアで働く大学生・華恋(かれん)を想える自由な時間だ。 ​凍りついた北の大地から、夜を徹して、一秒でも早く。 鮮度を保ったまま届けたいのは、この魚だけじゃない。 ハンドルの遊びに隠した、不器用で真っ直ぐな俺の恋心。 ​「仕事だから行くんだ」って、自分に嘘をついた。 本当は、君の「お疲れ様」が聞きたくて、2000キロの孤独を走り抜ける。 ​時速90キロで駆け抜ける、世界で一番遠くて、一番近い片思い。 この最終便が届くとき、俺たちの冬は終わるだろうか。

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カクヨム
カクヨム2026/03/10
  • 現在の作品時速90キロのラブレター。積荷は鮮魚、行き先は彼女の待つ街