あらすじ
王国では、聖女の回復魔法だけが人を救う奇跡だと信じられている。
だから傷は癒えても、熱病や飢えで死ぬ者が出ても、誰もおかしいと思わない。治らないのは信仰が足りないせい――そう切り捨てられるだけだった。
魔力が低く、まともな奇跡も起こせない私は、地方教会で“偽物聖女”と蔑まれていた。
けれど、死にかけた子どもを前にして前世を思い出す。
私はかつて、町の診療所で子どもや老人を診ていた医療者だった。
分かる。この子に必要なのは祈りじゃない。清潔な水、休ませる場所、汚れを遠ざけること、少しずつでも口に入れること。
奇跡では救えない命は、確かにある。
ならば私は、この世界の“当たり前”を変えてやる。
偽物聖女と呼びたいなら勝手に呼べばいい。
その代わり私は、あなたたちが見捨てた人々を、奇跡ではなく手当てと知恵で救い続ける。
やがてそれは、教会すらひっくり返す大きなうねりになっていく――。