あらすじ
「君のような無能で退屈な女は、王妃にふさわしくない」——建国記念舞踏会の夜、リーゼロッテは衆人環視の中で婚約破棄を告げられた。五年間、第一王子エドワードの婚約者として尽くしてきた日々。七カ国語を操り外交文書を処理し、殿下の失態を百二十七回も隠蔽し、財務不正を三十二件摘発した。全ては『婚約者として当然の務め』として、誰にも語らず、誰にも気づかれず。けれど彼女の献身は『無能』の一言で切り捨てられ、蜂蜜色の髪の令嬢が新たな寵愛を受けていた。「ようやく終わったのね」——涙も震えもなく、リーゼロッテは静かに指輪を外す。長い牢獄からの解放。それは絶望ではなく、安堵だった。彼女が去った王宮では、積み重なった問題が次々と露呈し始める。外交文書は滞り、隠蔽されていた不正が噴出し、各国との関係は悪化の一途を辿り——わずか三ヶ月で、王国は崩壊へと向かっていく。一方、舞踏会の夜に深い紫紺の瞳で彼女を見つめていた隣国の皇太子アレクシスは、リーゼロッテの真の価値を知っていた。正当に評価される喜び、愛されている実感。五年間求めて得られなかった全てが、彼の傍にはあった。これは『無能』と蔑まれた令嬢が、本当の居場所を見つけるまでの物語。