あらすじ
(冒頭)人間の社会には、奇妙な言葉が存在しています。本来であれば最も望ましいはずの「平和」という状態が、ときに軽んじられる形で語られるのです。「平和ボケ」という言葉があります。「頭の中がお花畑だ」という言い方もあります。これらの言葉は、一見すると現実を直視することの大切さを説いているように聞こえます。しかしよく考えてみると、その言葉の奥には、平和をどこかで侮るようなニュアンスが含まれています。争いのない状態を「ぬるい」と言い、優しさを大切にする態度を「現実が見えていない」と笑う。この価値観は、当たり前のように社会の中で使われていますが、実はとても不思議な現象です。本来、人類が長い歴史の中で願ってきたものは、戦争ではなく平和のはずだからです。それにもかかわらず、平和を軽んじる言葉が消えることはありません。この事実は、人間の心の奥にあるある種の矛盾を示しているように思えます。