あらすじ
「……ん…………うおっ」
夜、とあるアパートの一室。ふいに目を覚ました彼は、錆を落とすようにまばたきを繰り返した。現実と夢の境目はまだ曖昧で、視界は水の中にあるみたいに霞んでいる。干しっぱなしのシャツに棚。ぼやけた像がゆっくりと輪郭を取り戻していく――そして次の瞬間、思わず声を漏らした。
ベッドのすぐ脇に、見知らぬ男が立っていたのだ。
部屋を照らしているのは、カーテンの隙間から差し込む外灯の白い光だけ。男の輪郭がぼんやりと浮かび上がっている。中年で頭髪は薄く、腹はわずかにせり出している。
男は横向きに立ち、左半身をこちらに向けているため表情はよく見えない――いや、そもそも無表情のようだ。
彼はびくりと肩を跳ねさせ、反射的にタオルケットを掴んでベッドの端へ身を寄せた。
「ゆ、幽霊……?」
彼はかすれた声でぽつりと呟いた。すると男はゆっくりと、ほんのわずかに顔を彼のほうへ向けた。その瞬間、彼は心の底から後悔した。