あらすじ
七年ぶりに祖母の家で節分の夜を迎えた真白は、幼い頃から繰り返し聞かされてきた「今夜だけは、誰が来ても戸を開けるな」という言葉を思い出す。
山あいの古い集落。早く戸を閉めろと言う近所の人。落ち着かない祖母。何かを待っているような家の気配。
そして夜更け、玄関を叩く音がする。
戸の向こうから聞こえてきたのは、十年前に死んだ兄の声だった。
「開けて」
「寒い」
「入れて」
懐かしいはずの声なのに、すりガラスの向こうの影はどこかおかしい。
祖母は戸ではなく、真白の手を止めようとする。
節分の夜、この家で本当に外に出してはいけないものとは何なのか。
死者の声に呼ばれる夜を描く、和風ホラー短編。