あらすじ
母の真志乃が亡くなり沙代子は久しぶりに故郷へ戻った。
あまりいい思い出の無い場所へ帰るのは、少しだけ気が重かった。
この村には古い言い伝えがある。
村のはずれの屋敷に住む村の守り神、皆生御命(ミナハミノミコト)が代替わりする際に村から一人女を嫁に出す。そうすれば数百年の間、次の代替わりまで安泰に暮らせるという。遠い昔の儀式は、いつの間にか迷信のように思われていたが、40年前の代替わりで村はその言い伝えが現実なのだと思い知る。
形式的な儀式でやり過ごすはずが、嫁入りした晩に女が死んだ。
それを境に村の人間は屋敷の住人を恐ろしい力を持った得体のしれない化け物だと怖がるようになってしまった。
地上に来たばかりのミナハミノミコトは、まだ未熟な神だった。初めての契りで娘を死なせてしまったことに傷ついていた。
真志乃と出会ったのはその頃だった。滝つぼに身を投げた真志乃と、産まれる前の沙代子を助け、命を救えたことで自信を取り戻した。
18年ぶりの村の生活だったが不便はなかった。母の幼なじみで同級生の武夫は、子どもの頃から良く面倒を見てくれる。母の最期も武夫が看取った。
いつも心配して様子を見に来てくれる武夫だが、沙代子は徐々にその執着心に疑問を抱くようになった。
実家に住むことになった沙代子は、季節を追いながらうっすらと残る記憶をたどり、村で過ごした日々を少しづつ思い出していく。
母も祖母ももういない。沙代子は家を片付け始めた。ほとんど入ったことのない納戸や納屋を整理するうちに、昔の記憶がよみがえってくる。
自分の出生の秘密、祖母の死、母のこと、そしてミナハとした約束。
全ての記憶を取り戻した後、沙代子はミナハとの約束を果たす。
登場人物
沙代子…34歳バツ2。母が亡くなり18年ぶりに村へ戻る。
真志乃…沙代子の母。17歳で沙代子を生む。享年51。
武夫…真志乃の幼馴染、同級生。51歳土木会社社長。真志乃への執着が過ぎて沙代子の人生に大きな影響を与えている。
ミナハ…皆生御命(ミナハミノミコト)、村の守り神。蛇。何代目かは不明。少年から青年のような容姿で年を取らない。沙代子の命の恩人。
百多裡…ミナハの従者、小柄な老人。百足。
知世…沙代子の祖母。