あらすじ
亡き母の死後、公爵家の正統な継承者であるはずの少女は、屋敷の片隅で静かに暮らしていた。
実権を握っているのは、入り婿の父とその後妻、そして社交界で「公爵令嬢」として振る舞う義妹。
誰も疑わない。
誰も止めない。
偽りの公爵令嬢は、華やかな社交界で輝き続けていた。
だが、本来の継承者である彼女は何も言わない。
怒りも、反論も、争いも起こさない。
ただ静かに、書類を整えながら時を待っていた。
やがて王宮で大舞踏会が開かれる。
義妹は誇らしげに、亡き公爵夫人の形見である豪華な絹のドレスを身に纏って現れる。
それは誰もが息を呑むほど美しい衣装だった。
けれど――
そのドレスには、誰もが知らない「禁忌」があった。
舞踏会の夜。
華やかな音楽が流れる王宮で、ある出来事をきっかけに空気が一変する。
そして静かに現れる、本当の継承者。
その瞬間、
偽りの身分で築かれた栄光は、音もなく崩れ始める。
これは、
静かに時を待ち続けた一人の少女が、
奪われたものを正しい場所へ戻していく物語。
そして――
偽りの公爵令嬢が辿る、あまりにも残酷な結末の物語でもある。