あらすじ
人の嘘が「声の色」として見える特殊能力を持つ図書館司書、水森詩織。幼い頃から偽りの色彩に傷ついてきた彼女にとって、世界は汚れた嘘でできたヘドロの洪水だった。静寂と秩序だけが支配する図書館を唯一の避難所とし、誰にも心を許さず生きてきた。
そんな彼女の日常は、一人の男の出現によって静かに崩れ始める。閉館間際に現れたその男の声は、どこまでも純粋な「無色透明」だったのだ。
彼の名は、海道蓮。人間の心の闇や嘘をテーマにした作品で知られる、ベストセラーミステリー作家。誰よりも嘘を知り尽くしているはずの彼が、一切の嘘をつけないという巨大な矛盾。
蓮の透明な声に唯一の安らぎを見出し、次第に惹かれていく詩織。しかし、二人の心を繋いだ蓮の新作小説が、過去の悲劇と裏切りを呼び覚ます。蓮の人生を破壊した「泥色の声を持つ男」が、再び彼らの前に現れた時、詩織の呪いであったはずの能力は、やがて愛する人を守るための唯一の剣となる。
信じられるものが何もない世界で、それでも人を信じようとする二人の魂の軌跡を描く、感動の物語。