あらすじ
亀裂の入り方を見れば、落としたのか叩きつけたのかはすぐわかる。壊れ方は嘘をつかない。
港街デルガの裏通りで、元ギルド検品係のリーネは小さな遺物修理工房を営んでいる。「安全基準が厳しすぎる」と追い出された。最近、ギルドの検品精度が落ちているという噂を耳にするが、それはもう私の仕事ではない。
ギルドが「廃棄」の赤札を貼った遺物。他の職人が匙を投げた品。リーネの手にかかれば——冷やせなくなった保存箱は乾燥棚に生まれ変わり、二つの壊れた遺物は一つの温風装置になり、海底の照明器は発光素材を取り出して防錆塗料の原料になる。
壊した理由は聞かない。ただ、壊れ方を見ればだいたいわかる。
工房の棚の一番奥には、一つだけ直せない遺物がある。毎朝、蓋を開ける。まだ、音はしない。閉じて、棚に戻す。——いつか、直す。
◆1話完結・毎日21時更新◆ 追放→独立開業×お仕事×遺物修理ファンタジー
──この世界には、他にも物語があります──
『その遺物、面倒な匂いしかしない』(港街の鑑定士ミステリ)
『辺境ギルドの受付嬢ですが、冒険者の嘘は帳簿でぜんぶバレます』(受付嬢お仕事もの)
同じ世界を舞台にした作品をいくつか展開しています。どこから読んでも楽しめます。