あらすじ
エーゲ海を思わせる海を臨む、白壁の喫茶店。
ある日、大きなトラベルザックを背負ってやってきた美しい旅の女「ニラ」は、ひょんなことからその店でウェイトレスとして働くことになる。
少し尖った耳を持つ彼女に、人間社会の嘘や冗談は通じない。「動物ですから」「2000年くらい生きてます」と、ただ事実をそのまま伝える彼女の接客は、常連客を時に和ませ、時に常連の男をカフェイン中毒のような動悸へと追い込んでいく。
閑古鳥が鳴いていた店を一人で回してしまう異常な有能さ。
冷めたコーヒーを淹れ直しただけで、なぜか重苦しい宗教画のモデルにされてしまう顛末。
彼女が、人間の短い日常にふらりと立ち寄り、またどこかへ行くまでの、波の音とコーヒーの香りに包まれた穏やかな連作短編。