あらすじ
『3』を完全、それ以外を災厄とする思想が支配するトライソル王国。不吉な4番目の流星の象徴『流星の子』として疎まれてきた少女ルクリアは、枢機卿フェルナンドに呼び出される。暗殺された息子アルベルトの魂を冥界から連れ戻せ、という命令だった。フェルナンドにとって息子は『完成された部品』に過ぎず、その欠落を埋めるために、誰からも悲しまれない『異端の四』を使い捨ての道具として冥界へ送った。
自分がいなくなれば病の母が救われると信じたルクリアは、存在を無に帰す『死』を救いとして受け入れ、火口へ身を投じた。しかし冥界で目覚めた彼女は、自らを『外の世界の神』と名乗る青年チユと出会う。二人は『3』を否定し『7』を刻む異質な舟に乗り、冥界の旅を始める。
灼熱の第一層で、ルクリアは清らかな死者になる対価として母の形見のブローチを求められる。余分を捨てて正しい死者になることこそ、フェルナンドの命じた使い道だった。葛藤の末にブローチを差し出したルクリアを待っていたのは、解放ではなかった。魂の芯から何かがごっそりと引き抜かれる感覚——それが、三律の削ぎ落としの正体だった。
旅を通じてルクリアは、感情をコストと見なす冷徹な7つの階層を突破していく。愛も、欲も、言葉も、記憶も、正しくあろうとするたびに削られていく。それでも最後まで消えなかったものが、彼女の中にあった。最下層で再会したアルベルトは、父が望んだ完璧な石像ではなく後悔を抱えたひとりの人間だった。
ルクリアは削ぎ落とされながらも残ったものを全て抱え、帰路につく。最初に失ったブローチを奪い返し、七層で拾い集めた全てを光に変えて、冥界に目覚めつつある災厄を撃ち滅ぼす。地上に帰還した彼女を待っていたのは、母の死とフェルナンドとの対決だった。
削られぬこそ、覚悟なり——母が遺した言葉の意味を、ルクリアはようやく理解する。余分を抱えたまま、彼女は自らの足で歩き始める。