あらすじ

婚約破棄の通告は、王宮の白い回廊で、すれ違いざまに告げられた。 まるで今日の天気を伝えるような声だった。 足が止まる。 息を吸おうとして、うまくいかない。 指にはめていた銀の指輪が、急にひどく重くなった気がした。 振り返ることはしなかった。 あの人の背中を見れば、きっと膝が折れる。だから前を向いたまま、一歩だけ踏み出した。 宮廷魔道具工房の自分の机に戻ると、引き出しの中の設計図がすべてなくなっていた。 (……ああ、そういうことか) 婚約だけではない。 私の三年間も、まとめて捨てられたのだ。 指輪を外して、空の小箱に収める。 指の跡だけが、白く残っていた。 荷物をまとめ終えたとき、工房の窓から見えた空は曇天だった。けれど不思議と、涙は出なかった。 悲しみより先に、指先が疼いていた。 ――作りたい。もう誰にも奪われないものを、この手で。 翌朝、届いた一通の手紙には、見たこともない辺境の地名が記されていた。

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小説を読もう2026/03/09
  • 現在の作品婚約破棄された宮廷魔道具師は静かに証拠を作る ~捨てられた私が王国を救うまで~