あらすじ
モンパンシェ伯爵家に嫁いできたリシュエンヌ。夫であるフェルナンとは、幼いころ一度だけ、林檎の花の咲く庭で出会っただけだった。
結婚してすぐに不在になってしまった夫、フェルナンとの思い出と、夢の中の不思議な出会い。フェルナンの不器用な愛情とリシュエンヌの恋の物語。
夢と現実の境目で、リュシエンヌが選ぶのは……。
【登場人物】
□リシュエンヌ/スミレ色の瞳に淡い金色の髪 19歳
モンパンシェ伯爵家に嫁いできたばかり
――林檎の花のように風が吹けばどこかに飛んで行ってしまいそうなくらい儚くて、触れれば散らしてしまいそうで怖かった。
□フェルナン /琥珀色の瞳に赤みがかった深い色の髪 32歳
モンパンシェ伯爵。リュシエンヌの年の離れた夫。軍人。少将。
――すっと背筋を伸ばし、林檎の木を見上げる姿はどこか威厳に満ちていて、リュシエンヌはぼんやりとその姿を見つめていた。
□カーライル/夜空を流したみたいな黒い髪に、銀の星を思わせる瞳
リュシエンヌが夢の中で出会った青年
――日に焼けた浅黒い肌。風に揺れる艶やかな漆黒の髪。瞳は澄んだグレーで、光の加減できらきらと輝くさまは、まるで精巧な銀細工を彷彿とさせる。―
□薬屋/アラブ風の衣装を身に纏った漆黒の瞳の怪しい青年
――知識の量は、年齢に比例するとは限らないのですよ
□アルベール/猫の毛のような柔らかな亜麻色の髪、ライトブラウンの瞳
フェルナンの士官学校時代の友人。軍医。准将
――……俺でなければ、もっと別の命が救えたかもしれない。
静かな微笑みを浮かべているが、その瞳には後悔が滲んでいるようだった。