あらすじ
「——おどれら、誰のシマで暴れとんのじゃ」
関東最大の妖怪極道『李王組』二代目組長。それが、女子高生・李王桜のもう一つの顔だった。先代の父を失い、崩壊しかけた組を守るため、桜は夜な夜な数珠を外し、白銀の髪をなびかせる「九尾の女帝」へと変貌する 。しかし、その代償は重い。半妖である彼女の肉体にとって、強大すぎる妖力は内臓を焼き、喉の奥に鉄の味を込み上げさせる——。「……黒曜、後始末を頼む」 一人、暗闇で血を吐きながら「最強」を演じる彼女の足元に、音もなく跪く影、黒曜蓮(こくよう れん)。学校では彼女を「どんくせえ」と嘲笑い、徹底的に蔑む最凶の不良後輩。だがその実体は、かつて夜の桜に屈し、彼女の冷酷な美しさに魂を売った黒狼の妖怪だった 。「御意のままに、お頭」 昼間の「無能な自分」を否定する男と、夜の「怪物な自分」を崇拝する男。
桜は、蓮の向ける狂信的な瞳が怖かった。「もし、私がただの人間になったら、この男は私を殺すだろう」と 。けれど、彼女はまだ知らない。
蓮が苛立っているのは、彼女が弱いからではない。
誰も気づかない彼女の「血の匂い」と、独りで震えるその「指先」に、自分だけが気づいてしまったからだということを—— 。