あらすじ
「君の指導は地味で古臭い。これからは最新魔導具の時代だ。無能な平民は去れ」
王立騎士団で十年間、新人教育を担ってきたシルスは、合理主義を掲げる新団長によって追放を言い渡される。
彼が教えてきたのは、地味な素振りと徹底した魔力制御。派手な魔法スキルを求める現代の騎士たちにとって、それは「時間の無駄」でしかなかった。
しかし、彼らは知らない。
シルスの指導を受けた騎士たちが、これまで一度も戦死者を出していない理由を。
そして、彼が裏で騎士たちの「魔力暴走」を密かに抑え込んでいた、唯一の防波堤だったことを。
騎士団を去ったシルスは、酒場で一人の少女、アイリスと出会う。
彼女は名門公爵家の令嬢でありながら、魔力特性が「低出力」というだけで実家を追放され、婚約者からも見捨てられた『落ちこぼれ』だった。
「私……強くなりたいんです。見返したい人がいるんです!」
震える手で剣を握る彼女に、シルスは静かに告げる。
「いいだろう。地獄のような『基礎訓練』に耐えられるなら、君を世界最強にしてやる」
シルスの規格外な指導により、アイリスの「低出力」は、実は「超高密度」な魔力圧縮だったことが判明。
たった一振りの素振りが地形を変え、ただの歩法が音速を超える。
無自覚な師弟が世界を震撼させていく傍ら、シルスを失った王立騎士団は、制御不能な魔導具の暴走によって崩壊の道を辿り始めていた。
「今さら戻ってこい? 断る。この子の『素振り』を見守るのに忙しいんだ」
これは、教え子を愛しすぎる最強教官と、彼を信じて覚醒したお嬢様が、自分たちを捨てた世界を「基礎の力」で圧倒する物語。