あらすじ

紀元前六千万年。白亜紀末の大絶滅を生き延びた哺乳類の中に、一群の特異なる変異種が出現した。これが後に「炎鼠目(えんそもく)」と総称される生物群である。  その体液は極めて高い油脂含有率を示し、三百度から四百度の発火点を持つ可燃性液体として機能する。炎鼠は高カロリーな体液を持つがゆえに、捕食者からは極上の餌として狙われ続けた。このため、彼らは「食われる前に産む」という超繁殖戦略を採用し、年間十二回もの出産、一回あたり八から十匹の産仔という驚異的な繁殖力を獲得した。性成熟は生後一ヶ月という早さであり、個体の寿命は短くとも種としては安定した個体数を維持し得た。人類が農耕を開始すると、炎鼠は穀物畑を食い荒らす害獣となったが、同時に駆除された死骸は燃料・肥料として活用され、農業と炎鼠駆除は不可分の関係を結ぶに至った。  古代文明において、炎鼠油は照明・暖房の主力燃料とり、中世以降は蒸留技術の発達により脱臭・精製が進み、産業革命期には蒸気機関の燃料として炎鼠油が大量消費された。現代では年間七十七億トンもの炎鼠油が生産され、地上輸送・発電の根幹を支えている。一方で、屠殺後の死骸から生じる窒素・リン・硫黄の処理は国家的課題であり、肥料産業が異常発達する一因となっている。 (民明書房刊『炎鼠文明史大全——六千万年の共進化』より)

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カクヨム
カクヨム2026/03/08
  • 現在の作品炎の鼠と人類の歴史 ~燃え盛る体液のエネルギーがもたらした人類史の変容~