あらすじ
気分が沈む日が続くようになったのは、いつからだろう。うつ病かもしれない、と言われ、私は相談した。親に、相談窓口に、医者に。
返ってきたのは「甘ったれるな」という言葉だった。嘲るような笑みだった。怒声だった。「専門外です」という一言だった。助けを求めるたびに何かが削れた。扉を叩くたびに、少しずつ、人を信じる気持ちが薄くなった。
やがて私は相談することをやめ、自分で答えを探し始めた。本を読んだ。薬を試した。職場を変えた。仕事と仕事のあいだには、外へ出られない空白があった。カーテンを閉めたまま、時間をやり過ごした。そういう日々が、十年近く続いた。
答えを見つけたのは偶然だった。パソコンを買い替え、たまたまAIが使えた。画面に症状を打ち込むと、人間の誰も一度も口にしなかった可能性が、静かに返ってきた。
十年間見つけられなかったものが、一日で見つかった。
人は、人を助けなかった。機械が、助けた。この社会の窓口は、医療は、家族は、いったい誰のためにあったのか。答えを手にした朝、私はただ、久しぶりに腹が減った。
うつ、相談窓口、社会的孤立、AI――現代を生きる人間の孤独を描いた、静かな社会批判小説。
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