あらすじ

断罪、と声が響いた瞬間、私の足元から音が消えた。 広間を埋める貴族たちの顔が、蝋燭の灯りに照らされてぼんやりと揺れている。誰もが正義の顔をしていた。誰一人、私の目を見ない。 王太子が宣告を読み上げる声は、どこか他人事のように平坦で、私はそのことに妙な安堵を覚えた。ああ、この人は最初から、私のことなど見ていなかったのだ。 隣に立つ金髪の女性が、目元をハンカチで押さえている。その指先に震えはない。 爵位剥奪。領地没収。辺境への追放。 言葉が並ぶたびに、周囲からため息が漏れる。 けれど私の心は、不思議なほど凪いでいた。 背筋を伸ばしたまま、広間を出る。石畳を踏む靴音だけが、長い廊下に反響した。振り返らない。振り返る理由が、もうここにはない。 馬車の窓から見えた王都の門が、ゆっくりと小さくなっていく。 懐に手を入れると、指先にひとつだけ残った薬草の種が触れた。前の世界で覚えた、あの薬草の種。 ――辺境には、土がある。水がある。そして今の私には、誰にも奪えない知識がある。 唇の端が、わずかに持ち上がるのを感じた。

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小説を読もう2026/03/08
  • 現在の作品追放先の辺境で始めた薬草園が王都を救うなんて聞いてません ~元悪役令嬢の静かな逆転劇~