あらすじ

オレの思考は完全に固まった。 天地がひっくり返った、 なんて生易しい表現じゃ足りない。 目の前の美しいバーテンダーを見て、 心臓が壊れるかと思った。 「あっ、居た居た、彼だよ」 ガダンの声が耳に届かず、 視界はカウンターの奥に立つ一人だけに集中する。 人混みをかき分ける度に、距離が縮まる。 誤魔化しはもう効かない。 月光を反射する肌は透き通り、 宝石のような瞳が揺れるたび光を散らす。 ――嘘だろ。 数分前まで、 二丁目で驚くことなどないと高を括っていた。 その自信は音を立てて崩れ、足がもつれる。 それでも、カウンターまで歩を進めるしかない。 「今、ここにいたバーテンダーは?」 「ご注文でございますか?」 違う。 オレが欲しいのは酒じゃない。 「えっ……どうした? sharkか?」 ガダンが横に立つ。 「shark boy? ああ、あの子は未成年でさ。 相棒、穏便にな」 俺から逃げた。 間違いない。 この世でたった一人、面白くては困る存在。 まさか、この一瞬が―― 人生で一番自由だった最後になるなんて、まだ知らなかった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
エブリスタ
エブリスタ2026/03/07
  • 現在の作品謎ラブコメ【ヨージのくせに】人生は、退屈との戦いだろ?