あらすじ
不器用で、何をしてもどこかうまくいかない中学生・マコト。
彼が所属するテニス部のコートは校舎に囲まれ、昼でも陽の差さない場所にある。まるで彼の毎日のように。
家では貧しさと両親の絶えない喧嘩。祖父は「自分は一角の人間じゃない。だから追うな」と言い残す。部では時折現れるOBに叱咤され、試合では負け続け、学校帰りには不良にカツアゲされる。何をやっても格好がつかない。
それでもなぜか、マコトはテニス部のキャプテンになってしまう。
密かに想いを寄せていた水音には振られ、心は行き場を失う。そんな矢先、水音と親しい同じ部の秀実の母親が火事で亡くなる。通夜の帰り道、秀実はぽつりと言う。「転校になるかもしれない」と。
自分だってこの場所にいつまでいられるのかわからない——マコトは、何も言えない。
やがて試合の日。
コートに立つマコトの耳に、秀実の声援が届く。
「頑張らない」と心に決める。
それでも彼は、トスしたボールを追う。
陽の当たらないコートで、それでも前に進もうとする少年の、哀しくてユーモアに満ちた物語。