あらすじ
僕の夢は、牧場だ。牛と暮らして、毎朝ミルクを飲む。英雄でも救世主でもなく、ただそれだけでよかった。
徴兵を避けて入った魔法学園。だが初日の属性判定で、僕は最悪の烙印を押される。闇属性。クラス全員が一歩引いた。
……目立たなくて済む、と思うことにした。
問題は脳内だ。気づいたら六人の英雄が住み着いていた。
・豪快な第一世代の鍛冶師。
・血の気の多い第二世代の剣鬼。
・傲慢な第三世代の魔術師。
・天真爛漫な第四世代のシノビ。
・計算高い第五世代のメイド。
・狂気を孕んだ第六世代の錬金術師。
——今日も脳内は戦場だ。
同時に「平凡に卒業する」計画は、初日に音を立てて崩壊した。
僕の魔法は《調理(クック)》一つ。料理をする上で、これ以上最高の魔法はない。
だが月冠鹿の蹄煮込みを一口食べた瞬間——骨と脂の暴力が喉を通り、何かが、僕の中で目を覚ました。
食うほど強くなる。だが食うほど、世界の闇が近づいてくる。
消える生徒、甘い錠剤、角だけを狩る密猟者——その闇は、いつか牧場にも、牛にも、ミルクにも手を伸ばす。
「死ぬ命は巡る命」
僕が守りたいのは、世界じゃない。牧場と、ミルクと、その朝だけだ。
牧場を守りたいだけの僕が、料理で世界のルールを喰らい尽くしていく。
※質感の高い狩猟・解体・戦闘描写・残酷描写を含みます。苦手な方はご注意ください。