あらすじ
「鈴木くん、鈴木くん……鈴木くん、ちょっと」
「はい」
鈴木が部長に呼ばれて席を立った。やれやれ、またか――おれは眉を指で掻き、視線だけをそちらへ滑らせた。
あの鈴木という新人は、ここ最近どうも遅刻が目立ち、つい三日前にも部長に注意を受けたばかりなのだ。
入社当初は真面目で温和、いかにも好青年といった印象だったのに、ここ一、二週間で様子ががらりと変わった。目つきが鋭くなり、口数も減り、どこかやさぐれているというか、態度が妙にふてぶてしくなっていた。
部長は鈴木を気遣っているのだろう。周囲に聞こえないよう声を潜めて話し始めた。だが皆、作業の手を緩めてつい聞き耳を立ててしまっているようで、オフィス内は静まり返っており、その配慮はほとんど意味を成していなかった。
「最近どうだ? 何かうまくいっていないこととか、悩みごとがあるんじゃないか?」
「まあ……」