あらすじ
「ペイジェス・ヴァロリアン!貴様との婚約を、今この場で破棄する!」
響き渡る声は王太子トバべのもの。華やかな夜会の中、中央に立つペイジェスに向けられた言葉は、鋭く冷たく容赦がなかった。
「……そうですか」
ペイジェスは静かに答えたが、取り乱した様子は一切ない。代わりに瞳はトバべの背後に並ぶ、彼の新しい恋人—侯爵令嬢キュムのやけに満足げな微笑みを見ていた。
「理由は聞くまでもない。貴様は常に食い意地が張り、淑女としてあるまじき俗物だ。特に、そのじゃがいもへの執着!下賤な食べ物を口にする姿は未来の王妃として相応しくない!」
トバべの言葉に周囲の貴族たちはざわめいた。ペイジェスがじゃがいも料理、特にポテトチップスをこよなく愛しているのは周知の事実。
しかし、彼女の家の財力や社交界での完璧な振る舞いから、これまで誰も表立って非難することはなかったのに。
「下賤……ポテトチップスが、ですか」
ペイジェスの表情に初めて感情が浮かんだ。悲しみでも怒りでもなく、純粋な憤慨だ。ポテチをバカにするなんて許さない。