あらすじ
「その指先が触れるとき、死に瀕した獣は再び大地を駆ける。」
16世紀、李氏朝鮮。身分こそが天の定めた理(ことわり)であった時代。
朝廷の権勢を握る高官の私生児として生まれ、奴婢の母とともに泥の中へ捨てられた少年・白光(ペク=グァン)。
唯一の肉親であった育ての父を失い、最果ての牧場に流れ着いた彼の手には、父が遺した古びた鍼(はり)と、生き物の命を「視る」圧倒的な観察眼があった。
当時の馬は、一国の軍事と物流を支える至宝。
白光(ペク=グァン)は言葉を持たぬ馬たちの痛みを聞き、その驚異的な治療術で、絶望視された名馬たちを次々と救い出していく。
やがてその噂は、自分を捨てた父が待つ、権謀術数渦巻く漢陽(ハニャン)の王宮へと届くことに。
これは、歴史の闇に埋もれた一人の奴婢が、獣医という「技」を武器に運命を切り拓き、やがて国家の動乱をも鎮めていく、孤独で壮大な成り上がりの記録である。