あらすじ
フリーターの青年、佐久間 恒一(さくま こういち)。特別な夢も目標もなく、コンビニの夜勤とネット掲示板を往復するだけの、どこにでもいる日本人だった。
そんな日常に、ある日から奇妙なニュースが増え始める。
全国で相次ぐ“変死”。
被害者には奇妙な共通点があった。
・家族がいない、または別居している単身世帯
・発見は死後数週間以上経過している
・死因は一様に心不全
・そして必ず遺書が残されている
その内容は、どれも似通っていた。
――生まれ変わる。
――この世界とはおさらばだ。
――次は“向こうの世界”で生きる。
まるで、異世界転生を信じているかのような文章だった。ネット掲示板では「日本終わったな」とネタ半分に盛り上がるだけ。恒一もまた、くだらない都市伝説だと思いながら書き込みを続けていた。
そんなとき、掲示板に一つのURLが貼られる。
『山にUMAが出た』
SNSに投稿された動画。
そこに映っていたのは、森の奥を歩く“人の形をした何か”。
当然、掲示板はフェイクだの加工だので騒ぎ立てる。だがその直後、スレッドの一人が突然書き込んだ。
『おい、テレビつけろ。○チャンネル見ろ』
半信半疑でテレビをつけた恒一の目に飛び込んできたのは――
《緊急速報》
そして、東京タワーの頂点付近に浮かぶ、発光する“人影”。
その瞬間から、世界は静かに壊れ始めた。
後にそれらは、こう呼ばれることになる。
AIRS(エアーズ)
……急性異世界転生シンドロームと。
日常とフィクションの境界が崩壊する、現実侵食型異世界パニックが始まる。