あらすじ

『最後の雨の、そのあとに。』

さよならを言った夜
街は静かに
銀色の雨に煙っていた

君は
僕の傘を残して
振り返らずに走っていった

あの日の僕は
君を守ることばかり考えて
君が息をする場所を
忘れていたんだ

優しさは
ときどき
檻になる

愛は
ときどき
重さになる

君がいなくなった夜
傘の下で
初めて気づいた

守りたいと願うほど
人は
誰かを閉じ込めてしまうことを

だから僕は
その傘を
そっと手放した

雨に濡れながら
歩くことを
やっと覚えたんだ

すると不思議だね

雨の向こうに
もう一度
君が立っていた

傘もささず
ただ
空を見上げて

泣いているのか
笑っているのか
わからない顔で

僕は
新しい傘を開く

今度は
君を包むためじゃない

ただ
隣を歩くために

最後の雨は
まだ降り続いている

だけど

そのあとに来る空を
僕たちは
もう知っている


連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/03/06
  • 現在の作品『最後の雨の、そのあとに。』