あらすじ

前の人生では過労死だった。この人生では、婚約破棄だった。どちらも突然で、どちらも朝のことで、どちらも「あなたはもう必要ない」という意味だった。 アルトハイム王国、宮廷魔道具工房の前。私は今朝、ここを追い出された。手には退去命令書が一枚。理由の欄には「素行不良および技術不適合」と書かれている。 (──嘘だ。) 私が作った魔道具は、いつも筆頭技師の名前で提出されていた。私の深夜残業の成果が、毎回、彼の功績になった。前世でも同じだった。終電間際のオフィスで資料を作り、朝になると上司のプレゼン資料に変わっていた。 既視感に、笑いが込み上げる。けれど、今の私には前世にはなかったものがある。 魔力と、この手で「作る」技術。そして──もう二度と、自分を安売りしないと決めた心臓の鼓動。退去命令書を折りたたみ、ポケットにしまう。振り返らない。 足は自然と、王都の外れにある古い鍛冶通りへ向かっていた。──その通りの突き当たりに、煤けた看板の工房がひとつ、まるで私を待っていたかのように扉を開けていた。

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小説を読もう2026/03/05
  • 現在の作品社畜だった前世の記憶で宮廷工房を直す ─ 婚約破棄された魔道具師、定時退社で国を変える ─