あらすじ
本編を一度読んでからこちらを読むことを強くお勧めします。
北の最果ての村に住む青年・カイルは、雪の中で行き倒れていた記憶喪失の少女・リズを助ける。
リズは、冬の極寒の中でも「暑い」と言って薄着で過ごし、包丁を持たせれば食材を粉砕し、火を使えば鍋を消し炭にしてしまう、絶望的に世間知らずで不器用な少女だった。
「いつか、カイルに美味しいスープを作ってあげたい」
そんなリズの健気さに惹かれ、二人は貧しくも穏やかな日々を過ごしていく。しかし、カイルは気づき始めていた。彼女が歩いた後の雪が溶け、その肌が触れれば火傷するほどに熱いことに。そして、彼女から漂う、この世のものとは思えない神々しい沈香の香りに。
ある日、村に「災厄の種」を追う異端審問局が現れたことで、二人の日常は崩壊する。逃げ込んだ極限の雪山で、カイルの命が尽きようとしたその時、リズは自ら「人間」であることを捨て、その内側に宿る「太陽」を解き放つ。
炎の中から現れたのは、カイルの愛した少女ではない。
すべてを焼き尽くし、すべてを忘却する、孤独な神――不死鳥の姫だった。
溶けた指輪と灰だけを残し、彼女は空へと舞い上がる。
これは、愛した人の体温さえ、二度と思い出せなくなった男の絶望の物語。